この度、日本で発売を開始した「ピエール アーペル ユール ディシ エ ユール ダイヨール」もまた、エレガントなフォルムに、非常に高度なメカニズムを搭載した、時計ファン垂涎の傑作である。
一見して、驚くのはシンプルな文字盤だ。数字が除く窓が2つ配されているだけ。実は、これがこの時計の高度なメカニズムを端的に表現している。
11時位置と5時位置の2つの窓は、ジャンピングアワーによる時刻表示。5時位置の窓に現地時間を、11時位置には本国時間を表示する、第2時間帯表示モデルでもあり、ユーザーを旅に誘うようなエレガントな姿を生み出している。
文字盤のセンターに配された針は、分針であり、5時半から10時半にかけてプリントされた目盛りをさして分を表示する。60分に達した針は、瞬時にゼロ分の位置に戻り、扇形の運針を反復するレトログラード表示である。
こうしたコンプリケーションを多重に搭載しながら、ケースは極薄に仕上げ、コレクションが持つ本来の優雅さは、少しも損なわれていない。
ホワイトラッカー文字盤のセンターに施された装飾も美しい。このコレクションらしいケースの6時位置と12時位置で、ベルトアタッチメントを一点で固定する仕組みも、時計の持つシンプルさを際立たせる。
昨年1月、ジュネーブで開催された高級メゾンが中心となって開催している見本市、SIHHにおいて発表されていたモデルで、日本上陸が今か今かと待ち望まれていたモデルであり、2015年1月のSIHHにおいても、ヴァン クリーフ&アーペルの新作に期待を持たせる1本として、大いに注目したい。