父のアドバイスに従って、日本の大学へ入学。大学卒業が近くなり、ほかの学生とおなじように就職試験を受け、日本のある銀行の最終面接にすすむことになった。その面接でおもわず本音が出てしまった。「特に銀行で働きたいってわけではありません」。このひと言で彼の人生は大きく変わってゆく。関口さんは、2004年23歳で、スイスではなく、フランスへ旅立つことにした。一度は反対した父親だが、出発のとき、やさしく背中を押してくれたのは、父親だった。
しばらくフランス語を学んだあとに、時計学校に入学を試みる。フランス国境近くの技術専門学校に一旦入学できたものの、元々フランス国籍を持つ失業者対策のための学校だったので、外国人である関口さんは3週間で放校となる。しかしそのとき、声をかけてくれたのが、その時計学校の恩師だった。途方に暮れていた関口さんに住む場所を紹介し、時計を組み立てるためのアトリエを使わせてくれた。
こうして関口さんは、2007年フランスの国家時計技師資格(CAP)を獲得する。時計学校で学んだ卒業生でもなく、しかも外国人である関口さんの合格は、異例中の異例のことだった。
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