自動巻きクロノグラフの開発は困難、といわれていた1960年代、最初に立ち上がったのはホイヤー社4代目ジャック・ホイヤーだった。彼が共同開発を持ちかけたのは、なんとウィリー・ブライトリング。いくら顔なじみとはいえ、ライバル会社だ。周囲は驚いた。
しかし、両者は人格者であり、互いに認め合っていた。複雑機構の専門工房デュボア・デプラ社のジェラルド・デュボアも加わり、1965年、最強のメンバーでプロジェクトが始動する。
設計を担当したジェラルドは、当初からモジュール式を主張した。だが、従来の自動巻きにクロノグラフ・モジュールを追加すると厚みが増す。その打開策は4番目の協力社ビューレン(当時)にあった。新開発の小型マイクロローターを組み込むことで、1969年3月、ついに完成に至る。この世界初の自動巻きクロノグラフ・ムーブ「キャリバー11」を最初に搭載した時計のひとつが、このとき新規開発されたモナコだった。しかも、角型に防水性を持たせるのが難しかった当時、世界初の角型防水時計でもあった。左リューズが特徴的な力強い角型クロノは多くのアーティストに人気を博し、映画『栄光のル・マン』でマックイーンが着用したことで、伝説となったのである。 |